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株式会社アクト・コンサルティング

経営コンサルティング

幹部候補者・コア人材の育成を加速する

    企業の将来を担う幹部候補者や、収益の源となっているコア人材の育成に、多くの企業が取り組んでいる。しかし、これら人材の育成に対し、マネジメントは幾つかの問題を感じている。これらの問題の解決に、ノウハウ・マネジメントが貢献できる余地がある。

一つ目の問題は、お仕着せの、一般的な育成方法に対する問題認識である。「自社の文化や風土面の強さを、いかにして育成プログラムに組み込むか」、「現在の幹部やコア人材は、お仕着せのカリキュラムとは異なる能力を持っている。これをどのように抉り出し、移植するか」といった問題である。
ノウハウを人材育成に活用していない企業では、目指すべき人材ビジョンや必要スキル、育成方法は、一般的によく知られる切り口で作り上げることになる。例えば、「顧客の高い信頼を勝ち取る・・・」などの人材ビジョン、「分析力、創造力、リーダーシップ」といったスキルなどである。しかし、実際の経営幹部やコア人材は、そのような一般論だけを学んで、今の能力を獲得したのではない。もっと、企業や業務固有の能力を持っている。

ある製造業はで、技術開発部門を率いるマネージャーをコア人材と位置づけ、育成を強化していた。この会社の技術領域は広く、マネージャーには、各分野の技術者の能力を引き上げ、これらを目的に向けて統合する能力が求められた。そこで、「プロジェクト・マネジメント」や「MOT(技術経営)」などの管理技術を中心とした育成プログラムが構築された。例えば、技術者の能力を引き上げるために、経営戦略を部門のビジョンに展開して明示する方法や、部下の負荷と能力から適正な業務量を与える方法、部下の能力の把握と教育方法などが準備された。この会社では、ある別の機会に、有能なマネージャーのノウハウを抉り出す活動が行われた。そこで、有能なマネージャーたちが、育成プログラムとはまったく異なるマネジメントを行っていることが明らかになった。例えば技術者の能力を最大に引き出す場合、ある有能なマネージャーは、以下のノウハウを実践していた。(なお、ここでノウハウとは、「組織で共有されていない大きな効果を上げる方法」としておく)

  • 職場や会議を、常に明るい雰囲気にし、笑いが絶えなくする
  • リスクを覚悟で推進する場合、自分(マネージャー)がリスクの責任を取ることを明言する
  • 他部門の譲歩でボトルネックが解決できる場合、自分が先頭に立って、他部門に折衝する
  • 部門のビジョンには、技術者の夢を必ず入れる

この会社の技術者は、えりすぐりの人材で構成されており、そもそも能力は高かった。そのため、各専門分野では、マネージャーは部下の能力を超えることなどできない。また技術者は、計画や管理を嫌い、自由な雰囲気を好んでいた。これを前提に、上記ノウハウが、なぜ技術者の力を引き出すか、そのロジックを整理すると、以下のようになる。(ロジックの整理には、第2回で紹介した「成果を上げるロジック」を使っている)

表)有能マネージャーのノウハウ(成果を上げるロジック)

一般のマネージャーはどのように行っているか
部下を管理して力を引き出そうとするが、えりすぐりの技術者である部下は、過度な管理を好まず、マネージャーも部下の専門領域の素養はなく、管理は効果を上げない。
その結果どのようなロスがあるか
その結果、部下の生産性やモラルが低下する。部下とマネージャーの信頼関係も弱くなる。
有能マネージャーはどのように行っているか
能力が高く管理を好まない部下の特性を活かし、以下の施策を打つ。
  1. やらされ感を排除し、自由な発想ができる明るい雰囲気を維持する
  2. リスクの責任を持つ、他部門と折衝するなどの行動で、部下がマネージャーのために「一肌脱ぐ」気持ちを作る
  3. 1つの方向に束ねる場合、必ずその中に、技術者の夢を入れ、やる気を醸成する
その結果どのようなリターンが得られるか
部下が、最大の能力を発揮する。

この会社では、すべての有能マネージャーからノウハウを抉り出し、これをマネージャー育成方法に盛り込んだ。マネージャーの人材ビジョンも、管理統率型ではなく、部下が一肌脱ごうと思う人材へと変えられた。「部下が一肌脱ごうと思う人材」などという人材ビジョンは、一般的な切り口で考えていても、発想できないものである。

幹部候補者やコア人材の育成では、有能者のノウハウを抉り出し、「成果を上げるロジック」を明確化し、これを育成プログラムに盛り込むことが重要である。

2つ目の問題は、「学ぶ力」を高めることである。幹部候補者やコア人材の育成では、教育やOJTなどの「教える方法」は議論するが、学ぶ側の「学ぶ方法」は、各人に任されている。そこで、学ぶ力を強化できれば、育成効率はもっと上がるはずである。ノウハウ・マネジメントの手法を用いると、この問題を解決できる。

ノウハウ・マネジメントでは、ノウハウの抉り出しと体系化を、有能者の実績(ファクト)を「成果を上げるロジック」に展開することで実現する。有能者に、「あなたのノウハウは何ですか」と聞いても、正確な答えは返ってこない。そこで、ファクトをロジックに展開することで、ノウハウを言い当てるのである。この方法は、「気づき」を基に新たなノウハウを学ぶために用いることができる。自分や他人の成功実績を見て、あるいは受講した教育から、「気付き」を感じたら、これを「成果を上げるロジック」に展開するのである。実際、有能者の中にも、類似する方法で自分のノウハウを拡充している人達がいる。
この方法は、訓練して修得することができる。具体的には、毎日その日の気付きを、「成果を上げるロジック」に展開し、これを定期的に持ち寄り、これをこの能力を獲得した人間が評価・指導する方法である。

そこで、育成対象者に、最初にこの「気付きを基に、ファクトをロジックに展開する力」をつけることで、「学ぶ力」を一気に高め、育成効率を向上することができる。「ファクトをロジックに展開する力」を身につけた者は、育成の過程で「気付いたこと」があると、これをロジックに展開し、自分なりのノウハウを拡充していくのである。

 

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