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株式会社アクト・コンサルティング

経営コンサルティング

有能者のノウハウを用いて、業務革新・IT化を推進する 

    業務革新、IT化には、いまだ手が付けられていない「ニューフロンティア」がある。それは、有能者のノウハウをえぐり出し、これを業務プロセスやシステムに展開して、組織のケーパビリティーを一気に向上させることである。多くの企業は、ノウハウを「暗黙知」などと呼び、文章化できない、システム化できないと思っている。しかしそれは誤りである。

外資系生命保険会社の事例を示そう。この会社で、有能営業マンのノウハウを抉り出すと、例えば「実験顧客」というノウハウが明らかになった。外資系生命保険会社の場合、営業マンは男性が多い。歩合制の給料で、家族を養わなければならない。この場合、クロージングの「恐怖心」を克服する必要がある。クロージングとは、顧客に保険の契約を行ってもらう、営業の最終段階のことである。クロージングを早めなければ、何回も顧客に会うことになる。すると、営業効率が低下し、給料が下がる。かといって、クロージングを早めると、顧客が性急なクロージングを嫌い、商談が失敗することもある。この有能営業マンは、手持ち顧客の一部を「実験顧客」と位置づけ、積極的なクロージング短縮化を図っていた。「実験顧客」と位置づければ、顧客に嫌われても諦めがつく。つまり、積極的なクロージングを阻む「恐怖心」がなくなる。また、「実験顧客」であるので、顧客に会うまでに、顧客満足度を高めながらクロージングを早める施策の仮説を幾つも準備し、実験の中で検証し、成功した施策を蓄積していくことができる。その後、「実験顧客」で得た施策を、通常の顧客に展開し、営業効率を高めるのである。

このノウハウは、「見える化」できる。上述の説明を、実践事例を交えて整理し、「ノウハウ記述書」を作り、他者に説明できる。業務プロセスに展開することもできる。まず、①手持ち顧客を特性ごとに分類し、②分類ごとに代表的な顧客を選び実験顧客とし、③実験顧客に対するクロージング早期化施策の仮説を準備し、④これを実践検証し、⑤顧客特性別のクロージング早期化施策を蓄積し、⑥一般の顧客に適用する。というプロセスだ。また、「顧客満足度を高めながらクロージングを早める施策」のデーターベース化も可能である。

効果の大きなノウハウは、1人の有能者から、通常3〜5個得られる。これらを業務プロセスやシステムに展開することで、組織のケーパビリティーを、一気に高めることが出来るのである。

ノウハウを用いた業務革新やシステム化には、注意すべき事柄がある。それは、有能者はノウハウを正確に言えないということである。失敗事例を示そう。
ハイテクメーカーのPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィース)で、顧客のシステムを開発するPM(プロジェクト・マネージャー)の、ノウハウを抽出・マニュアル化する活動が行われた。本活動では、秀でた成果を上げたPMから、成功のコツ、コツを具体的に実践する方法をヒヤリングし、これをマニュアルに展開した。しかし、折角作ったマニュアルは、活用されなかった。
例えば有能PMをヒヤリングすると、成功のコツは「営業段階から顧客と会い、プロジェクトの段取りを早めに議論することだ」と言った。そこでPMOでは、営業段階で顧客と会い、何を決めるべきか詳細なチェックリストを作った。出来上がったマニュアルは、たしかに営業段階でここまで突っ込んだ議論ができれば、やらないよりもましだろう。しかし、時間もかかるし、そもそも営業の責任だ。やって、どれほどの効果が得られるのか分からない・・・。との評価を受け、使われなかった。

本活動の問題は、ノウハウ抽出において、「成果を得るロジック」を明確化せず、プロセスや技術を作ったことである。ここで「成果を得るロジック」とは、当該ノウハウによって何故成果が得られるか、論理的に説明したものである。①一般の人間はどのように行っているか、②その結果どのようなロスがあるか、③有能者はどのように行っているか、④その結果どのようなリターンが得られるか、を明確化することによって示す。

例えば先の有能PMの場合、「成果を得るロジック」は、プロジェクトに顧客のしかるべき人材をアサインすることで、検討や意志決定を的確に行うことであった。以下に、ロジックを示す。

図)成果を得るロジック:プロジェクトに顧客のしかるべき人材をアサインする

一般の人間はどのように行っているか
顧客側プロジェクト・メンバーは、顧客が考えることであり、与件であると認識している。
その結果どのようなロスがあるか その結果、顧客メンバーのやる気や能力、社内でのポジションが不十分で、的確な検討や意志決定、関連部門への影響力行使ができず、プロジェクトが計画通りにすすまない。
有能者はどのように行っているか 顧客に、プロジェクト・メンバーとして妥当な人材をアサインしてもらうことを、自分の重要な使命と考えている。そこで、営業段階から顧客に関与し、どのような人材がいつ、どのような検討や決定を行うべきか。これができない場合、どのような問題が起きるか、先行事例を基に顧客を説得し、妥当な人材をアサインしてもらう。 その結果どのようなリターンが得られるか
顧客メンバーが、検討すべきことを検討する。決めるべきことを決める。必要な社内での影響力を行使する。その結果、プロジェクトが計画通りに遂行できる。

ロジックが明確にえぐり出せれば、それを見たものは、確かな成果が上がることを理解し、このノウハウを使おうとする。ロジックが明確になれば、このロジックを実現する、必要最小限のマニュアルが書ける。またロジックが明らかになれば、「あれは***さんのノウハウだ。私とは考え方が違う」などという議論が起きない。成果があがることが理路整然と説明でき、事例がセットで示されれば、正しいか正しくないかは判断できる。正しいものは実践すればいい。そこに、好き嫌いは存在しなくなる。

ただし、大多数の有能者は、自分のノウハウを上述のフレームワークで、理路整然と説明することができない。そこで、ノウハウを抽出する側のスキルが重要になる。ノウハウをロジックに展開するには、ノウハウを聞くのではなく、成功した事例を聞く。そしてその中に隠れているロジックを、上記フレームワークを用いて、有能者と聞き手が協力して探り当て整理する、という方法が必要になる。これには、聞く側で訓練が必要だ。

企業の業務革新、IT化は、多くの場合、現場の問題解決や、先進企業とのベンチマークを基に検討される。しかし、灯台下暗しで、社内に、有能者ノウハウという業務革新、IT化のニューフロンティアがある。これを活用しない手は無い。ノウハウえぐり出しの訓練を積んだスタッフを養成し、このニューフロンティアに切り込むことができた企業は、大きな成果をあげることができる。

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